今年の6月28日(金)に、中目黒GTプラザホールにて作曲家 西澤健一氏の演奏会が行われた。
この演奏会は、西澤氏が10年の歳月をかけて書き上げた6つの管楽器のためのソナタ作品を
一夜で披露する特別なステージだった。
出演は演奏順に、庄司さとし氏(オーボエ)、木原亜土氏(クラリネット)、髙橋美聡氏(ファゴット)、
班目加奈氏(トランペット)、浦丈彦氏(イングリッシュホルン)、鈴木真紀子氏(フルート)、
6名の名手が集まった。そして、ピアノ伴奏は作曲者の西澤健一氏。
なんとも贅沢な公演となった。
西澤氏は、ダブルリード楽器(オーボエ・ファゴット・イングリッシュホルン)のために3曲のソナタを
書きあげたが、世界的に活躍されている奏者が念頭におかれていることも魅力のひとつ。
2015年に作曲されたオーボエソナタは、ハルトマン氏(ベルリン・フィル)の来日に合わせて、
弊社会長が依頼をして誕生した曲。依頼の際には、こんなリクエストをされていた。
「ぜひ、サン=サーンスと同じくらい演奏される曲を書いてください!」と。
2018年のファゴットソナタは、ラッツ氏(トーンハレ管)のために作曲され、
2021年のイングリッシュホルンソナタは、ホーヴ氏(ロサンゼルス・フィル)のために作曲された。
もちろん、ハルトマン氏、ラッツ氏、ホーヴ氏が初演をした。
当日の演奏会でピアノ伴奏していた西澤氏は、
各奏者の新しい表現に喜びを感じながら演奏をしているようだった。
初演者とは異なった、新しい演奏に発見を繰り返しながら音楽はすすんでいく。
その瞬間、瞬間で生まれる旋律を、私たちは「美しい」と感じていた。
大切なことは、このソナタが多くの奏者に演奏され、曲そのものが聴き手に引き継がれることだ。
クラシック音楽の本質は、そこにある。
今この時代に生まれた曲、現代の曲には絶対に必要なことだと思う。
曲が演奏され続けることで、作品は深みを増しその価値が高まる。
西澤健一氏はクラシック音楽という流れの中に、しっかりと立っている作曲家である。
音符が音となり空間が満たされたとき、西澤氏にしか生み出せない「音楽」が立ち上がる。
そう、フランスを代表する大作曲家、サン=サーンスのように…。
西澤 健一(にしざわ・けんいち)
国立音楽大学を一年半で中退し、以後独学で研鑽を積む。室内楽から交響曲、自身の台本によるオペラに至るまで幅広いジャンルで100曲以上の作品を発表。
2001年にブリュッセルで開催された個展以降、楽壇からは超然としながらも、国内外の著名な演奏家たちが惜しみなく称賛する気鋭。「瞑想の形式のなかで文学を演じている(ダス・オルケスター誌)」「簡素な透明性に満ち、エネルギッシュで崇高な内容を持つ西澤の音楽は、まず第一に人間であることに感動する側に立って語り掛ける音楽を味わうという喜びを、われわれに取り戻してくれる(メキシコ・シナロワ紙)」繊細な音色が持ち味のピアニストとしても活動するほか、舞台・映像作品に揮毫を寄せたり、文筆でも賞歴を得るなど、多様な才能を誇る。(西澤健一氏 公式ホームページより)
写真提供:株式会社アートワークス