どうしても聴きたかった 東フィル 第999回 定期

音楽と言葉

3月15日(金)にサントリーホールで行われた、東京フィルハーモニー交響楽団
第999回 サントリー定期シリーズの公演に行ってきました。
この演奏会で首席オーボエ奏者の加瀬孝宏先生は、東フィル最後のステージ。
どうしても、ホールで聴きたいと思っていた演奏会でした。

曲目は、レスピーギ作曲「リュートのための古風な舞曲とアリア」第2組曲と
オルフ作曲 世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」でした。

一曲目のレスピーギは、冒頭から木管セクションが大活躍の聴かせどころがある。
絶妙なアンサンブルで奏でられるメロディーが、ホール全体を一気に暖かい雰囲気で包みこんだ。
美しい! 美しい!! 美しい!!!
と耳を傾けた。同時に私は「あ、加瀬先生の音だ」とわかり嬉しくなった。
オーボエの響きにどんどんと意識が集中していった。

二曲目の「カルミナ・ブラーナ」は大編成。
オーケストラに加えて、合唱団、児童合唱団、3人の独唱者が出演。
ステージは奏者で満員だ。
独特なリズムとシンプルな響きが特徴で人気のある曲。
曲の出だしから大音量、重層的な響きでホール全体に密度の濃いサウンドが鳴り響いた。
音の海の中から、サントリーホールの隅々まで届く上品で美しいオーボエが聴きとれた。
私は「あ、加瀬先生の音だ」とわかり嬉しくなった。


以前、私は 武満徹 作曲「ディスタンス」をテレビ放送で見たとき
画面越しではあったが、その美しさに心の底から感動した。
この曲でソロをつとめた加瀬先生の演奏に衝撃を受けた。

ところが、何故かその後すぐに考えが変わった。
オーボエと笙の響きに満たされたあの空間の意味を理解するには
「きちんとホールで聴くべきだった」と思いなおした。
そして、今でもあの演奏をホールで聴かなかったことを後悔している。
そんな理由もあり、今回の加瀬先生のオーケストラでの区切りの演奏会は、
どうしても会場で聴きたかった。


今は、昔と違って CD や YouTube 、もちろん ソロ・リサイタル 等々で
加瀬先生の演奏に触れる機会はいろいろとある。
しかし、オーケストラや大きな空間の中で輝きを放つ
加瀬先生のオーボエをまたホールで聴きたいと思っている。
なぜならば、私は加瀬先生の演奏が大好きだからだ。

終演後に、加瀬先生は「楽器をかえても僕の音になるね…」とおっしゃっていた。
聴く人の心を揺さぶり、説得力がある演奏、また聴きたいなぁ…、
と自然に思える理由がやっと分かった。

いつの日か、オーケストラの中からオーボエの音が聴こえてきて
「あ、加瀬先生の音だ」とわかったら、私は感動で涙がとまらないだろう。

                                                                                                演奏写真提供:東京フィルハーモニー交響楽団

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