ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 オーボエ奏者
クリストフ・ハルトマン氏 からの メッセージ
オーボエを手にしたきっかけ、レッスンを受けた日々のこと、
また、オーボエという楽器のとらえ方について…、
ハルトマン氏なりのスタイルをお話してくださいました。

ハルトマン氏がオーボエを始めたきっかけは、とてもシンプルだった。
それは、学生時代に習っていたピアノの先生からかけられた何気ない一言。
「オーボエでもやってみたら?」
今となっては、ピアノの先生の真意は分からない。
ただ、その一言がなかったら世界的オーボエ奏者 クリストフ・ハルトマン は
生まれなかったことは確かだ。
ハルトマン氏は、早速その日の夜に両親に新しい楽器(オーボエ)を勧められたことを話した。
すると、両親もまた「興味があるのなら、やってみたら」と、いたってシンプルなアドバイス。
そして、あまりにも自然な流れで、オーボエが新しいパートナーになった。
その後、オーボエを何人かの先生に習い、ミュンヘンでG.パッシン氏の門下生になった。

パッシン先生のレッスンは、非常に明確でした。
例えば「音をきれいに出しなさい」とか「今の課題はここだから、これとこれをやりなさい」というように、
全てが具体的、はっきりとしていて、分かりやすい。
その指導スタイルは私の好みでした。とても充実した日々でした。
毎日のレッスンで学んだことが、全て身に付いていったので、
今でもベルリン・フィルで演奏するときに当時学んだことが役立っています。
彼の教えが今の私を支えてくれています。
パッシン先生には本当に感謝しています。

オーボエを吹き始めたのは、今から40年くらい前のことで、その頃はマリゴを吹いていました。
パッシン先生もマリゴを使っていましたよ。
当時は、今のように質の高い楽器が少なかったと思います。
また、フランスの楽器をジャーマン・スタイルのリードで演奏することに苦労しました。
あれこれと試行錯誤しているうちに、デュパンに出会いました。
デュパンとは相性がよく、長い間吹いていました。
ところが、IDRSでリグータを試奏するチャンスがありました。
それは、今までリグータが苦手としてきた部分を克服した、新しいコンセプトのオーボエでした。
何度か試しているうちに「これこそ自分の理想とするオーボエだ」と感じ、
それからはリグータを使うようになりました。
また、最近ではブルゲローニも魅力的な楽器を作っていますよね。
色々と改良が重ねられていて、プレイヤーは満足できる楽器だと思います。
私にとって、オーボエを吹く喜びを与えてくれる楽器は、現時点ではリグータとブルゲローニ。
この2つが、自分の行き着いた楽器、到達点ということではなく、
今のところ満足できる最高の楽器という意味です。

やはり、全てのオーボエには問題があります。
オーボエの場合、理想の楽器というのは難しいと思います。
パーフェクトな楽器というものは、有り得ないのではないでしょうか…。
楽器というのは、吹いて鳴らすというものではなくて、
「自分の音を楽器に吹いてもらう」訳ですから。
この楽器が良いと皆が言うから、自分も吹いているのではなくて、
まず、自分自身がその楽器を好きになることが大切だと思います。
それでも上手くいかないところがあった場合は、
楽器と(良い意味で)どこで妥協をするのかが、ポイントになりますよね。
そして、クリアしなければいけない課題をしっかりと克服をして、
理想的な演奏ができる楽器を見つけることです。
皆が絶対にこの楽器が良い!と言うから
私も同じ楽器を吹いています、というのは実はダメなのです。
もちろん、多くのオーボエ奏者が良い!と言っている楽器を
受け入れる柔軟さは必要だと思っていますが…。
皆さんがベストな楽器に出会えることを祈っています!

ハルトマン先生、自分にとって理想の楽器が見つかるっていう事は、まるで結婚のようですね!
ハルトマン氏:そう!その通りだよ! ん、あれ? 今まで、もう何回も楽器を替えているなぁ…。
2024.10 JDRサロン

