皆さま、こんにちは!
本日はオーボエ・ファゴットとは切っても切れないリード…その原材料となる「葦」についてのお話です!
リードの原材料となる「葦」の名前は“Arundo donax”(学名)といい、日本では「ダンチク(葮竹、暖竹」、「ヨシタケ」と呼ばれる多年草で、主に温暖な気候地域に海岸近くに生育しています。原産地は地中海沿岸地域ですが、現在は日本、中国、東南アジア、インドを含む亜熱帯地域に広く分布しています。日本名には「竹(タケ)」という文字が入っていますが、「イネ科」の葦植物に分類されます。
非常に繁殖力の強い植物で、植えられた場所で生育範囲をどんどん広げることで、元々その地域に居る在来種を追い出してしまうという側面もあり…「世界の侵略的外来種ワースト100」というリストにも登録されてしまっています…。
歴史的に、リード材料としての利用を目的とした”Arundo donax”の栽培は、南フランスから始まり、現在もこの地域が中心的な産地として知られていますが、その他にもスペインやトルコ、中国、南アメリカ地域でも栽培が行われています。
茎が材料として十分に生育する期間は2年程であり、木材としては非常に短い期間です。収穫期は毎年12月の中旬~3月の新月の日とされており、農地で管理栽培しているものもあれば、自生しているものを収穫するという場合もあります。
少し話は逸れますが、今月8月5日(土)にJDRにて、“Rieger社×KOMATSUREED-FGリードマシン相談会・実演販売会-“というイベントが開催されました。このイベント際に、お越しいただいたリーガー社の公認アドバイザーである、ホセ・ハビエル・ロメロ 氏にリード材料の産地毎の違いについて、質問をさせた頂いた際に伺ったお話を紹介します。
Q:南フランスやトルコ、南米…など様々な産地がありますが、産地毎の材の特性の違いなどはあるのでしょうか?
A:(”Arundo donax”は)そもそも材料として均質性が少なく、安定した材料というわけでは無いという側面があるのですが、「産地毎」という観点ではバラツキが少なく、性質の違いというのはそれほど大きくないと言われています。しかし、実際には産地や土地ごとに、材の感じが違うということは、リードを作られる人なら感覚的に感じられていると思います。もちろん、地域ごとの気象条件の違いや傾向というものがあるので、それが産地毎の違いに影響しているということが言えるかもしれません。より具体的に言うと、収穫のタイミングの違いや、収穫後のプロセスによる影響というのが大きいのです。例えば、同じ産地であっても例年より降雨量が多く、日照も十分な場合などは葦の生育も早い場合などは、収穫のタイミングも早まるため、収穫時点での材質も時間をかけて生育した場合と変わってきたり、色味として「青み」のかかった状態になることもあります。同じ土地でもこのような理由から、その年、その年によって違いが出てきます。これは例えるなら、「ワイン」のようなものです。「ワイン」もその年の気候に影響を受けて「良い年」や「悪い年」というものがあるように、リード材となる葦にもそのような違いが出てくるのです。
収穫されたケーンは乾燥のため、日照下に置かれた後、納屋の中に積まれ約2年間寝かせられます。先程のホセ氏の話によると、この乾燥のプロセスでムラが出ないように日に当たる面を変えていくのですが、どの面にも同じように日を当てることは難しいため、このあたりのプロセスも質感の違いに繋がってくるのではないかとのことです。
時間をかけて寝かせられた葦は、根本~先端にかけて部位毎に機械で切断されます。リード材料として使われるのは主に根に近い下部になります。切断された材は、真直度(まっすぐさの度合い、曲がりが無いか)や直径ごとに分類され、再び約10日間程、日照下に置かれます。この過程によって、材の色味が普段私たちが目にする黄金色になります。その後、仕上げとして表面の樹皮に磨きがかけられ、材料として出荷が可能な状態(丸材)となります。
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ダブルリード楽器にとっては醍醐味でもあり、”悩みのタネ”にもなるリード。「今年の材はなんだか感触が違うな…」と感じられた際には、その葦が辿ってきた道のりに少し思いを馳せてみてください!