私が8歳くらいのとき、日曜日に小学校の体育館で
近所に住んでいるチェンバロ奏者が、子供たちを集めて小さなコンサートを開いた。
私は母親に連れられて聴きに行った。もちろんクラシック音楽を全く知らない頃だ。
チェンバロのキラキラとした響きと、バッハという作曲家に出会い
ワクワクしたことを今でもよく覚えている。
チェンバロ奏者がユニークな方で、バッハの曲の他に
右手と左手で違うメロディーを同時に演奏し曲名当てクイズをしたり
アンコールに小学校の校歌をバロック風のアレンジで演奏してくれた。
子供たちは、知っている曲だったので大いに盛り上がった。
その奏者は、休憩時間にチェンバロの周りに子供たちを集めてチェンバロを触らせてくれた。
みんな「私も弾きたい!弾きたい!」と言って祭りのように賑やかだった。
今考えれば大胆なことだ。
私も少しだけチェンバロで音を出してみた。
なんとも言えない感覚だった。
第3回 日本ファゴットコンクール 二次予選 選択曲 の
バッハ 無伴奏チェロ組曲 の楽譜が入荷してきた。
中身を見ていらた小学生のとき体育館で出会った
チェンバロとバッハのことをふと思い出した。
バッハが大好きになり学生時代は、礒山雅先生の本を読み、丸山桂介先生のラジオを聴き、
樋口隆一先生の講義に参加し、鈴木雅明先生の演奏会に通った。
何とかその世界に近づきたい一心だった。
入荷してきた楽譜には、ファクシミリが付いていた。
おまけみたいだな、と思ったけれど、これが抜群に面白い。
「当時はこういう楽譜で演奏していたんだなぁ…」と思いながら
少しバッハの世界に近づけたかも…、と私はまた勘違いをしている。