HINKE と 私(阿部)

私がヒンケを買ったのは、1994年10月31日 月曜日。
高校生のときだ。なぜ、日付がはっきりと分かるのか?

それは、祖父が大切な物を購入すると日付を書き入れる人だったからだ。
私もそれをまねして、よく日付を書いていた。
アンドウナイフを買ったときも鞘に日付を書き入れた。

おそらく高校生の私は、後で振り返ったときに、
日付を記入しておけば練習した道のりが分かると思ったのだろう。
しかし、日付を記入しご丁寧にハンコも押して私は満足をしたようだ。

このヒンケ、ページをめくるとある重大な事実に気が付く。
練習をしたときの書き込みが全くない、さらった形跡がない。
実に鮮やかで綺麗なままだ。

例えば、1ページ目  Sostenuto の No.1
Fのときは「左Fキー!注意!」と書き込みが欲しいところだが、
残念ながらポイントになる書き込みは一切ない。
あるのは購入した日付のみ…。

ただ、ひとつだけささやかな救いがある。
折に触れて、このヒンケにオーボエ奏者のサインをもらったことだ。

上から順番に、ホリガー氏、ブルグ氏、インデアミューレ氏、みんな、神様だ。
「せっかく俺たちがサインをしたのだから、お前さん、もう一度チャレンジしてみたらどうだ?
オーボエ、ちゃんと吹けると楽しいぞ!」と巨匠たちの声が聞こえてくる。

ヒンケを買ってから30年以上がたった。
買ったときは「よし、今日からたくさん練習をして上手くなるぞ!」と思っていた。
その後の私は、時の速さについて行けなかったのかも知れない。

来年、50歳になる。
年明けから、ちょっと、さらってみようとかと思い直している。
歳をとるのも悪くない。

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