梅雨のジョイントのお話

JDRリペアマンのつぶやき

かなり気温も上がり、いよいよ季節は夏になりますね。
コンクールや演奏会など、本番を控えている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

本番前に限って、いつもはしないミスやトラブルが起こることは往々にしてありますので、
いつも通りの心持ちで落ち着いて臨むようにできるといいですね。

 

さて、今回は梅雨の時期にトラブルが増える楽器のジョイントについてお話していきます。

 


 

楽器のジョイント部分は、多くは管体にコルクシートを巻いており、
コルクの弾力性によって管内の気密性を保っています。
また、しっかりと管どうしを固定することで、キーの連絡部分のズレを防ぎ、キーバランスの崩れを防いだりと何かと重要な部分となっています。

 

ただ、多くの楽器は管体はもちろん、コルクシートも天然素材を用いている為、気候の変化にかなり敏感です。

 

特に梅雨の時期は湿度の増加によって膨張したり、対して冬季は湿度の低下によって収縮したりと季節に合わせて変化していくため、ジョイントに限らず季節の変わり目に楽器の調整をおすすめしているのは、この気候の変化が楽器にとってネックになるからです。

 


 

FGの場合は管体が変化しやすくコルクの面積も広くなっている為、OB族以上に問題が発生しやすくなっています。
そして、コルクの場合だと緩くなってしまった際に交換を行わないと対処ができないため、JDRで取り扱っている楽器の場合は全てコルクを糸に交換しています。
これによって、糸の巻き数を変えることでコルクよりも容易に調整が可能となっています。

 

上記の写真のようにジョイントがきつい場合には少し糸をほどくことで調整することが可能ですが、あまりほどきすぎると必要以上にジョイントが緩くなり、がたつきの原因にもなるため、少しずつ様子を確認しながら作業をするようにしましょう。
*調整をする際は必ず糸の巻き終わりからほどいていくようにしましょう!(糸のちぎれやほつれに繋がるおそれがあります)

 

次にOB族で発生するトラブルとしては、コルクが膨張してきつくなったり、ジョイント部が木部の物は管体自体が膨張して奥まで入らなくなる、などがあります。

 

ジョイント部に金属のリングが入っている物(③)はコルクの膨張のみで済みますが、金属リングの無いモデル(①②)はコルクと合わせて木部の膨張も同時に起こることもあります。
その状態で無理に組み立てて使用すると、コルクの剥がれや、使用後にさらに膨張して最悪抜けなくなる可能性がある為、グリス等を使ってもかなりきつい、管体の木部が入らない、などの場合は、調整に出していただくことをおすすめします。

 


 

OB・FGに関わらず、このようなトラブルをなるべく減らすポイントとしては、楽器の保管時の湿度や温度の変化をできるだけ小さくすることが大切です。ですので、できるだけ気候の変化が少ない、または管理ができるような部屋に保管するようにすると大きな変化を減らすことができます。(温湿度計などでチェックできるようにするのも効果的です)

 

ジョイント部がきつい場合にグリスを使う場合、分解後にそのままにしていると、汚れが溜まってこれもジョイントがきつくなる要因になったり、コルク自体が劣化して剥がれてしまう可能性もあるので、必ず拭き取ってから保管するようにしましょう。
*拭き取る際はスワブ等管内の掃除に用いるものは避けましょう。(管内に汚れが付着してしまいます)

 

また、ケース内に加湿目的のアクセサリ(加湿ケース等)を湿度の高い時期に入れっぱなしにしてしまうと、前述のようなトラブルの原因となったり、管体やケースにカビが発生する恐れもありますので、必ず冬季のみの使用に留めてください。

 

ジョイントに限らず季節の変わり目にはさまざまなトラブルが発生しやすいため、いつも以上に楽器のお手入れ・取り扱い方に注意していきましょう。

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