きょうは書籍のご紹介:”Wilhelm Heckel Six Generations Dedicated to Music”(森田)

スタッフコラム

皆さま、こんにちは!

東京は寒さが少しだけ和らぎ季節の変わり目のようです…皆様いかがお過ごしでしょうか?
本日のJDRスタッフコラムは「とある本」のご紹介です。
Cover

書籍のタイトルはWilhelm Heckel Six Generations Dedicated to Music” ー あのファゴットの「ヘッケル」で有名な、”ヘッケル社(家)”の何世代にも渡る歴史、その詳細が綴られています。一冊の本で全く同じ内容が英語とドイツ語の二つの言葉で書かれているため、ドイツ語が読めない私も、英語ならナントカ読み進めることができます。

著者のEdith Reiter氏はHeckel家の一人であり、長年に渡りヘッケル社の経営に携わってきました。1997年に引退してからは、会社経営をサポートする傍ら、本書の執筆に関わる調査活動を始めました。

この本を執筆するキッカケとなったのは、世界中の音楽家や楽器コレクターからヘッケルの楽器やその歴史に関する様々な質問や問合せが寄せられてきたことだということが、本書の冒頭で述べられています。Reiter氏はそのような経緯から、ヘッケル社の楽器製作やその所在(どの製番の楽器をどの地域に送ったか等)、歴史について、残された過去のアーカイブを発掘し、10年以上の年月にわたって調査を続け、最終的に本書のような一冊の本に纏めました。

冒頭の前書きから、面白いエピソードが紹介されています。
例えば、調査にあたって幸運だったこととして、重要な書類や文書(ビジネス文書、会計書、手紙、楽器の設計書等)や楽器製作に使われる工具等が戦争や、歴史上様々な困難な状況に直面する中でも失われることなく残ったことなどが述べられています。特にReiter氏の祖父の代に、これらのヘッケル社のノウハウ・歴史的なアーカイブ資料を都市部から遠くなれたタウヌスという小さな村の倉庫に保管することにしていたため、第二次世界大戦の戦火を免れることができたというのが非常に大きかったようです。

実際にタウヌスという場所をGoogleマップ上で確認してみました。

僕自身はドイツの地理には全然詳しく無いのですが…ベルリン、ハンブルク、ミュンヘン、ケルン…など、見聞きしたことのある主要な都市部から、確かに離れていますね。

さて、このような先代の「先見の明」が幸いして、貴重な資料やノウハウが失われずに済んだことは幸運なことですが、そこからはこの膨大なアーカイブ資料の発掘調査を行うことになったReiter氏のチャレンジや直面した困難について述べられています。
文書には古いものも数多く、判読不能な記述、走書きのメモ、紙の変色などを読み解いていかなければならないものが沢山あったようです。中でも特に大変だったのが、昔の時代のドイツ語の書体を解読しなければならない時だったということが述べられています。確かに、日本でも例えば100年、200年前というと江戸~明治時代…当時の人々の手書き文字を判読すると考えると難しそうですね。幸運なことに、後にドイツ語の古典を学んでいて、こういった文書の解読ができる親しい友人の助力も得ることができ、こういった資料も読み解いていくことが可能になったとのことです。

毎日のように新しい事実が見つかっては、既にある情報と照らし合わせて整合性や事実関係を考えるという作業が連日続き、会社の資料や、パソコンに保存した情報を家に持ち帰っては検証、翌日また資料を戻して新しい資料を持ち帰って検証…というようなルーティンが続きました。資料の多くは倉庫に眠った状態のものなど、そもそも整理のされていない状態のものであり、それらを一つ一つ意味づけし、整理していく作業は「パズルのようなもの」であり、「地道で時間のかかる仕事ではあるが、それに見合う価値のある仕事だった」とReiter氏は述べています。

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ファゴットにおいて、その名声に揺るぎのない地位を確立しているヘッケルですが、その歴史を知ることを通じて、楽器に対する理解がより深まったように個人的には感じています。

ちなみに、この本は以前JDRでお店の楽譜コーナーに置いてあったのですが、現在はお取り扱いがございません…。
(もし、ここまで読まれてご興味をお持ちになった方がいらっしゃいましたら申し訳ございません💦)

【JDRオンラインショップページ】https://jdrshop-jdri.jp/shopdetail/000000000844/

僕自身はJDRの技術課に所蔵されている本書をお借りして、勉強の一環として読み進めています。ダブルリード専門店の一員として、皆様に楽器をご紹介する立場として、楽器の性能等について日々勉強を重ねることはもちろんですが、このような歴史的な側面について知っておくことも、新しい発見や、より深い理解に繋がってくると感じています。また、折を見て、僕のスタッフコラムの機会が回ってきたら、この本の中の面白いエピソードや興味深いお話などをご紹介できたらと思っています!

それでは、暖かくなってはきましたがまだまだ寒い日が続いています…。季節の変わり目、体調(そして楽器のコンディションにも!)お気をつけてお過ごしください!!

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