皆さんこんにちは!
今回は《リペア現場の風景》第四弾、ロウ埋めについてお話します。
オーボエを吹いていると、一度はハーフホールの雑音に悩んだ方も多いのではないでしょうか。
今回取り上げる作業は、その雑音の軽減を目的として行うものです。
オーボエでは、中音域のC#・Ⅾ・Ⅾ#で左手人差し指のキー、Hキーの穴を半分だけ開ける「ハーフホール」という運指があります。
そうすることで低音域からオクターブ上がった音を出すことができるのですが、この穴を半分開けるというのが存外難しく、開けすぎると特にC#に「シャー」というような雑音が混ざってしまい、逆に開けなさすぎるとオクターブ下がった低音域の音になってしまいます。
そこで、ハーフホールの部分にロウを埋めて小さい穴を開けることで、
前述の雑音が発生し辛く、かつハーフホールの運指を少し易しくすることが可能です。
それがこのロウ埋め、という作業です。
ただし、運指のスタイルによっては、こちらの手法を用いる事が出来ません……
通常のオーボエの運指にはジャーマン式とコンセルヴァトワール式があり、違いの一つとして3オクターブ目のⅮを演奏する際、左手人差し指を完全に離すか、穴を開けた状態で押さえるか、という違いがあります。
ジャーマン式であれば、キーを離した状態のためロウを埋めても開きの調整が可能ですが、コンセルヴァトワール式の場合、キーを押さえる必要があるため開きの調整が出来ず、さらにロウによって必要な穴のサイズを確保できなくなってしまうため、3オクターブ目のⅮに支障が出てしまうのです。
そのため、ハーフホールの雑音にお悩みの際は運指のスタイルがどちらか注意が必要です。
長々と語りましたが、それらを踏まえたうえで実際にどのような作業を行っているのかお見せします!
①ハーフホール内の掃除
まずは綿棒やアルコールを用いてホール内を掃除します。
古いロウや汚れなどがないかしっかりチェックが必要です!
②ロウを溶かして穴を埋める
次に、ロウを溶かしてハーフホール内に流していきます。
正確にはパラフィンという素材で、ロウソクやクレヨンなどの原料としても使われています。
水にも強いため、楽器から出た水分で溶けてしまう、というようなこともありません。
火に当てて溶かし、穴へ埋めていきます。
埋めるときもあまりぎりぎりまで入れてしまうと指に当たってしまうので、量も注意が必要です。
③埋めたところに穴を開ける
ロウでハーフホールをしっかり埋めたのち、1mm弱の穴を開けます。
ハーフホール内の菱形の穴の中心を通るように開けたいため、針を刺す位置にも要注意です。
その後、周りの余分なロウ、キーをきれいにしたら作業完了です!
以上、ロウ埋めの作業風景でした。
このように色々な問題や悩みに対応した修理・調整が可能ですので、
お悩みのことがあればぜひアトリエJDRへご相談ください♪
▼前回までの《リペア現場の風景》はこちら▼
*第一弾(溶接の技術も必要です!)
*第二弾(きれいに仕上げるためには観察が欠かせません……)
*第三弾(楽器にとってとても大切な部位です!)