今回はファゴットのU字管コルク交換についてご紹介します。
U字管に張り付いているコルクですが、ただ水漏れを防ぐ役割だけではありません。
コルクが欠けてしまうことで、低音域の音程が下がったり、出なくなったりする原因にもなります。
一部メーカーはU字管にゴムを採用していますが、JDRでは検品時に全てコルクに張り替えています。
ゴムとコルクの違いとしては、それぞれの弾力性が挙げられます。
ゴムというと柔らかく、伸縮性があるように感じますが、実は反発力がコルクよりも強く、U字管や楽器本体の形に密着しにくい傾向にあります。
密着度が下がってしまうと、水漏れ/息漏れの原因となり、特に低音G以下の吹奏感に関わってきます。
また、ゴムは温度変化や、ねじを締める圧力などで表面が歪んでしまうことがあります。
コルクの利点は、天然素材の中でもトップクラスの密封性があり、長期にわたって弾力性を保ち、尚且つ、加工しやすい点が挙げられます。
U字管コルクは、天然コルクシートを使っています。
天然コルクシートについては前回のリペアマンのつぶやき(https://jdri.jp/p/magazine/atelier/202401/9214/)にて少し解説しておりますので、ぜひこちらもご覧になっていただければと思います。
ただし、コルクもゴムも劣化によって硬くなり、欠けやすくなったり、歪みが生じて密着性は下がっていきます。
使用頻度や、劣化度合いによって交換が必要になります。
[修理での貼り換え]
① 古いコルクをはがす
コルク交換でも特に大切な作業です。
古いコルク、接着剤を丁寧に剥がしていきます。
残ってしまうと接着不良の原因になるため、しっかりととります。
コルクを貼る前に、U字管本体、ダブルジョイントに歪みがないかどうかを確認します。
この時点で歪みがあると、コルクが管体に密着せず、「新品のコルクに交換したのに水漏れ/息漏れがある」といった症状の原因になります。
U字管を曲げて調整し、できるだけ平面に整えていきます。
② コルクを貼る
しっかりと表面を整えたら新しいコルクを張り付けます。
この時点での接着具合がコルクが長持ちするかに直結するため、ムラがないように圧着します。
この時点で楽器に取り付けるためにねじ部分の穴をあけます。
[画像]ねじ部分 一枚目:成形前 二枚目:成形後
さらに、貼り付けてから楽器本体に取り付け、ねじを締めて圧着させます。
ここでしっかりとねじを締めて固定することで、コルクを楽器になじませています。
③ コルクの成形
外側は、おおまかに形を切り取り、ヤスリで整えていきます。
穴部分は穴あけポンチで開けた後、カッターでくりぬきます。最後にヤスリで形を整えます。
ヤスリがけは、U字管本体を削らないように細心の注意を払って行います。
以下は管内にあたる穴の成形を撮ったものです。
[画像] 一枚目:ポンチで穴をあけたところ 二枚目:カッターで切り出したところ 三枚目:ヤスリで成形したところ
[画像] カッターを使って穴を切り出していく様子です
[画像]これをもう一つ開けます。
最後に管体に取り付けて、本体とU字管に隙間がないことを確認して完成です。
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以上、U字管のコルク交換の解説でした。
意識的に見ることが無い箇所かもしれませんが、案外吹奏感や音程に関わる大切なパーツです。
「最近U字管キャップを外すと水分が….」「久しぶりに吹くんだけどこれでいいんだっけ?」といった場合など、お気軽にご相談ください。