リペア現場の風景 ~ファゴット U字管ベルトの修理編~

JDRリペアマンのつぶやき

《リペア現場の風景》としまして、実際に楽器修理の様子をご覧いただくシリーズ

第1弾としてファゴットのU字管部分の金属ベルト割れ修理を紹介していきます!

ファゴットの修理として、意外とよくある修理として、今回のU字管部分の金属ベルトの割れ修理があります。

金属が割れるなんて!と、実際に自分の楽器に起こってしまうとびっくりしてしまいますが、早めに修理すれば修理後はほとんど修理したことが分からなくなるくらいきれいになります。

金属ベルトが割れる原因としては楽器本体の木部が膨張することで、膨らむ力に耐えきれず金属が割れてしまいます。
特に新しい楽器は最初の3年くらいでかなり膨張し、この金属ベルトだけでなく、ジョイント部分の金属が割れてしまうこともよくあります。

それでは実際に修理の様子をみてきます。

まずは本体と金属ベルトを固定しているネジを外し、金属ベルトを取り外します。
金属ベルトに付着している接着剤や、汚れ、錆を取り除きます。

 

割れた部分を「ろう付け」という方法で接合します。
ろう付けする際はまず、フラックスというろう付けを円滑にするものを塗り、これを熱で溶かします。
ガスバーナーで金属を熱すると、金属の表面が酸化してしまい、ろうがうまく流れ込まず接合することができません。
これを防ぎ、金属表面の酸化被膜を除去するのがフラックスの役割です。

 

フラックスが解けたらさらに金属ベルトをガスバーナーで熱し、「銀ろう」という銀を主成分としたろう材を熱で溶かして流し込みます。
「銀ろう」は「はんだ」よりも融点が高く700℃前後なので、しっかりと熱していきます。
「銀ろう」は「はんだ付け」で知られる「はんだ」よりも強度があり、金管楽器はもちろん、木管楽器のキーもろう付けで接合されています。

 

ろう付け後の様子です。
しっかりと接合するため、多めに銀ろうを盛っています。

余分な銀ろうをやすりで削り取っていきます。
ある程度取れたら、紙やすりで表面を整えます。

 

本体側の木部も膨張しているので、金属ベルトが入るようにある程度削っておきます。
金属ベルトがすっぽりと、はまるようになれば接着剤を塗って、ねじ止めをして修理完了です。

木管楽器のリペアというと、ねじを回したり、タンポを調整したりというイメージが強いですが、このような作業もおこなっています。
金属のヒビや割れは放っておくと錆が入り込んで悪化していきますので、早めにご相談ください。

 

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