ハインツ・ホリガー オーボエ・リサイタル に寄せて

音楽と言葉

2023年9月19日に、東京文化会館 小ホール にてハインツ・ホリガー氏によるオーボエ・リサイタルが行われる。
久々の来日、ファンにとっては「待ってました!」と声を上げたくなる公演だ。
実際に私は家で声を上げ、大丈夫か?と家族に心配をかけたほどだ。

ホリガー氏に今回の来日についての「想い」をインタビューしたいところだが
叶わないので、このリサイタルがどれほど貴重なものなのか綴ってみたい。

ホリガー氏は1939年5月21日生まれ。今、84歳だ。
このコラムを読んでくださっている皆様の中には、オーボエを演奏されている方が多くいらっしゃると思う。

そこで、自分自身に引き寄せて想像してみて頂きたい。
仮に84歳になった時のことを…。
そう、はたしてその年齢まで、自分はオーボエを吹いているだろうか。

ホリガー氏は、10歳から作曲、23歳から指揮を始めている。
オーボエ奏者としては、1959年にジュネーブ国際音楽コンクールで第1位、
1961年にはミュンヘン国際音楽コンクールでも第1位を獲得した。
この2つのコンクール(世界的に権威があり超難関)で1位を獲得することは
通常ではありえない、考えられないことだ。
1959年から1964年まで、バーゼル交響楽団 首席オーボエ奏者として活躍した後、
フリーランスとしての活動をスタートし現在に至る。

ホリガー氏には、他の音楽家には見られない大きな特徴がある。
それは、オーボエ奏者であることに加えて、作曲家、指揮者としても超一流であり、
その全てのポジションにおいて、世界最高峰の一人であるということだ。

2012年のザルツブルク音楽祭では、レジデントアーティストとして招かれ音楽祭を盛り上げた。
2015年のサントリーホール 国際作曲委嘱シリーズでは、テーマ作曲家として登場。
自身の世界初演を含む一連の公演は衝撃を与えた。
2017年には、東京オペラシティ 同時代音楽企画「コンポージアム2017」に迎えられ、
作曲家としての集大成といえる「スカルダネッリ・ツィクルス」を日本初演、自らの指揮で大成功に導いた。
2019年には「ハインツ・ホリガー 80歳記念 オーケストラ・コンサート」を東京で行い、
圧倒的なパフォーマンスでファンを魅了した。

今回は、そのようなホリガー氏の魅力を聴くことができる。
ホリガー氏の息づかいをホールで体感できる、最高のチャンスがやって来る。
聴かない理由は見当たらない。

もう一度、考えを巡らせてみたい。
84歳になったとき、はたしてオーボエを吹いているだろうか。
約650席のホール、耳の肥えたお客様を前にしてステージに立てるだろうか。

結論を言ってしまえば「ありえない」の一言に尽きるだろう。
その「ありえない」ことが、現実に起こる。
ホリガー氏が、今、私たちに伝えたいことは一体何なのか、ホールでしっかりと全身で受け止めたい。

自身の作品を自身の演奏で披露することにより、芸術家としての価値を改めて問う姿は、あまりにも美しい。
更に高みを目指すエネルギーと共に、必ず世界最高の芸術を聴かせてくれるだろう。

芸術とは何かと問い続けているホリガー氏の思考は、
紡ぎ出されるサウンドと自作をもってして、その本質に迫る術を教えてくれるに違いない。
なぜならば、ホリガー氏は、今もなお、進化し続けているからだ。

後編を読む

ハインツ・ホリガー オーボエ・リサイタル
詳しくはこちら → https://www.hirasaoffice06.com/concerts/view/431

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